◎ステートメント

ほんの数年の間に世の中では歴史に刻まれるような出来事が数多く起こりました。私たちは自分自身の精神・身体・利益などを守るため、また家族やコミュニティなどを想いながら「ふつう」であるために行動してきたのではないでしょうか。

「ふつう」ってなんだろう？

この問いにどう答えるかは、私たちが生まれながらに持っている個性によって、また環境・状況・関係性などによって千差万別です。そして、その境界は、ゆるやかに調和する場合もあれば、大きな歪みになる場合もあります。

カメラを手にし、抑制された日常を見渡してみる。すると、人と人・人と自然・自然と自然・有機物と無機物などの間にも、小さな境界が無数にあり、その数だけ駆け引きが繰り広げられていることに私は惹きつけられました。日常はなんてドラマチックなんだろう。と。

街を歩き、シャッターを切り、作品を編む。この作業は取捨選択の連続であり、常に境界のどちらに立つかを突きつけられていることに他ならず、自己と他の差異について認識し「ふつう」の概念を拡張していくプロセスそのものです。

一歩踏み出せば、あらゆる光景が新しい視座を与えてくれるのです。